懐疑派blog

2004/06/26

改革の意味問う一票を


 小泉内閣が進める「構造改革」は「努力した者が報われる社会を作る」と言う。このフレーズにひかれる国民こそ、高い支持率を支える隠れた要因かもしれない。それでも、努力に応じた報いを受けていると実感する者は意外と少ない。実際、努力が足りないから自分は報われないと納得する者より、こんなに努力をしているのになぜ報われないのかと不満を抱く者のほうが多数派ではないか。

 そんな不満を解決してくれるのが「構造改革」だと聞けば、現状に不満を抱く人々が内閣を支持するのはある意味で当然だ。逆に言えば、高い支持率を維持するためには、社会の不満を鎮めるより、むしろ放置しておくほうが好都合かもしれない。そう考えると、野党が小泉内閣を攻めるのは予想外に難しい。なぜなら、構造改革の成果が出ていないと批判すれば、原因は「構造改革の遅れ」にあると見られ、野党の思惑とは裏腹に一層の改革推進を求める世論が支持に回ってしまう。

 この「返り血」的な構図に真っ先に気づいたのが自民党内のいわゆる「抵抗派」だったのではないか。それが事実なら抵抗派が「協力派」へと早々に変身した理由も理解できる。

 それでは、今更「協力派」になれない野党はどうすればよいのか。中途半端なマニフェストを提示するより、誰もが「努力すれば報われる社会」なんてそもそも作れないと批判に徹するのも一案だ。ほとんどの「競争」における報いは各自の努力よりも順位に応じて決まる。

 しかも、順位は自らの努力だけでは決まらず、競争相手の力や、時々の運、さらには勝敗や優劣を判定する人たちの判断によって大きく左右される。その真偽は、努力よりも運で誕生した小泉政権が熟知しているはずだ。

 実現不能な「構造改革」のキャッチフレーズに惑わされている限り、多くの国民は努力という「痛み」だけを強いられ、報いという「成果」はますます一部の勝者に集中する社会が作られていく。

2004/06/25

政治と経済のリンク=知命
 経済のグローバル化がいわれて久しいが、それが政治と経済のリンクを強めていることはあまり議論されていない。

 経済がグローバル化するということは、世界経済の影響を受けやすくなるというだけでなく、世界中の政治の変動からまともに影響を受けるということでもある。9月11日事件であれ、イラク戦争であれ、日本経済は直ちに大きな影響を受けた。こうした状況は今後も変わらないだろう。

 そうだとすれば、当面、世界のどのような政治情勢に気を配ればよいのだろうか。まず何よりも米国の大統領選挙の行方が大きなポイントであることは、いうまでもない。ブッシュ大統領が勝てば、おそらく経済政策はさほど変わらないだろうが、ケリー候補が勝てば、ドル安と貿易摩擦を仕掛けてくることは確かだし、イラクや北朝鮮のつけを各国にまわしてくることも十分考えられる。日本経済はかなり深刻な影響をこうむることになろう。

 次に、アジアの中では韓国とインドネシアの政治情勢が気がかりである。今年はアジアが選挙の年だが、マレーシア、フィリピン、台湾と意外によい結果がでたものの、韓国の選挙は政治の安定をもたらしていないし、インドネシアの大統領選挙は大きな不安要因である。とくに、インドネシアは日本の官民が巨大な債権を有しており、密接な政治経済関係を保っているだけに、その政治が不安定化したときの影響は計り知れない。

 さらに、中東の政治情勢はいっそう深刻さを増し、いつテロや暴動が起きてもおかしくない状況にある。しかも、それが米国の政治に影響を及ぼす可能性が高い。当面、米国、アジア、中東の政治情勢からは目が離せないといえよう。(知命)

毎日新聞 2004年6月25日 東京朝刊


東アジア共同体=猷
 つい先日、「東アジア共同体」の実現を目指すシンクタンクのネットワークとして東アジア共同体評議会(中曽根康弘会長)が旗揚げした。

 ここで東アジアとは、ASEAN(東南アジア諸国連合)10カ国に日・中・韓3国を加えたものをいう。この共同体の実現を望む声はマレーシアをはじめ、ASEAN諸国から盛り上がっている。中国はこれに意欲的にかかわり、今や推進役になろうとしているが、日本もようやくその体制作りに入ってきた。

 こうした国家戦略を立てるために代表的なシンクタンクのほとんどが参加するのは日本では初めて。このまとめ役を果たしたのは「日本国際フォーラム」(今井敬会長)で、シンクタンクを軸に産・学・官が協調して国の戦略を立てるという体制は今後の新しいモデルになり得よう。

 この評議会は研究成果を日本政府のほか東アジア各国の政府にも提言する。これが実を結ぶには政治がどうかかわるかが重要だが、北朝鮮や台湾の問題、米国の出方、豪州、ニュージーランドへの配慮などの難題がある。政治の姿勢があいまいになるのもそのためだが、世界もアジアも激しく流動している。手遅れによる損失は計り知れない。その意味では東アジア共同体が何を目指し得るのかをもっと掘り下げる必要がある。欧州の「EU(欧州連合)への道」と比べ、東アジア諸国は文化や経済の基盤の違いが大きい。

 しかし逆に、力の論理よりは多様性を尊重し、連帯を大切にする心やさしい風土がある。東アジア諸国の歴史的、文化的な厚みを生かした新しい行動原理を軸に、東アジアらしい共同体が生まれるならば、世界全体にとっても喜ばしい。そういう志を深め、実を結ばせることが国としての本当の戦略であろう。(猷)

北村肇(週刊金曜日)

北村肇(週刊金曜日「一筆不乱」)
「生命」や「人間」の深遠さに思いがいたらないジャーナリストは、報道に携わる資格がない

 足の小指を動かせますか?
 耳を動かせますか?
 できた人は、今度は胃を動かしてみてください。

 ジャーナリスト志望の若者を相手に講演を頼まれたときは、こんな戯れ言をけしかけることにしている。大抵は、みんなきょとんとしている。
 
 解説はこうだ。
「みなさんは無意識に、自分の肉体は自由にコントロールできると思っていませんか。でもそれは手足などごく一部にすぎません。内臓や、まして細胞は、自分のまったく手の届かないところにあるのです」
 
 あとは語らない。自分で考えて欲しいから。無論、本当に告げたいのは、「肉体だってそうなのだから、心はもっと不思議な世界。つまり『人間』は、奥の深い、それ自体が『神』と言ってもいいような存在なのだ」ということに尽きる。だからこそ、ジャーナリストは常に、「人間」に目を向ける必要がある。「生命」にとしてもいい。
 
 たとえば、「イラクのファルージャで500人の市民が殺された」と報じるとき、記者は「500人の生命」ひとつひとつに思いを寄せることができるだろうか。「多国籍軍参加」のニュースの向こう側に、大国が引き起こした戦争によって、これからも失われるであろうイラク人の生命を意識できるだろうか。要は、そういう問題なのだ。

 ときとして、官僚や政治家は、外交や政治をゲームとしてとらえる。そこには「人間」も「生命」もない。あるのは「勝つ」ことの興奮ばかりだ。ジャーナリストの仕事は、絶えず「人間」を念頭に置いたうえで、そんな彼らをいさめることであり、その実態を市民に明らかにすることである。

 イラク戦争報道も参院選報道も、「生命」の視点がなくては話にならない。にもかかわらず、一緒にゲームに興じるマスメディアが多すぎる。市民をコマとしか思わないジャーナリストがいたら、それは官僚や政治家より始末に負えない。

落合恵子「出生率」

■落合恵子「出生率」(週刊金曜日)

 晩婚・非婚化、少子・少産化の背景には、そういった社会的状況と個人的事情が複雑に絡み合った「それぞれの場合」がみてとれる。

 しかし、子どもは上の世代の年金や介護の担い手として生まれてくるわけでも、いまここに存在するわけでもない。子どもは子ども自身の人生を生きるために生まれ、そしていま、ここにいるのだ。また、個人がいつ結婚しようと(しなかろうと)、それはきわめてプライベートな領域に属する「個人の場合」である。政府がとやかく口を挟むことではない。

 法案成立まで明らかにしなかったことはむろん大問題ではあるのだが、子どもを年金や介護の担い手として無意識であろうと位置づけるような文脈には、ちょっと待てよ、と抵抗を覚えるわたしがいる。またもや「産めよ、殖やせよ」の大合唱時代到来、か?

 法案成立までの過程も酷かったが、子どもの存在は、先に老いゆく大人の「保険」ではない、と母を介護しながらつくづく考える。

「産めよ殖やせよ」時代から
女性の選択肢が広がる時代への社会の変化







塾生 では塾長、この出生率自体についてはどう捉えるべきでしょう? 少子化問題は本塾の書籍版でも論じていただいていますが、先進国の中で下り続けているのは日本だけだそうですね。

塾長 ドイツもイタリアも下げ止まりましたからね。出生率が上がらない理由は、いろんな観点で話されていますが、日本の場合は晩婚化や、結婚しても共働きが長く続く、という状態が急速に進み、それに伴って出生率が下った。当然の成り行きだと思います。

塾生 そっか。“過去最低更新”って聞くと、不安を増長されますが、予測できたことなんですね。突然、慌てる必要もないんだ。

塾長 はい。数字自体は驚くに値しない。かつ、一貫して下がり続けているのも当然で、もう少しこの状態が続いてもおかしくない。出生率が下る社会状況が、依然として続いているわけですから。それに、「なぜ日本だけが下がり続ける」と驚く必要もない。少子化社会への対応ということに関していえば、日本はどちらかといえばまだまだ発展途上国なんですから。少子化に対応した社会の仕組みがまだ整備されていません。

塾生 では、“出生率が下り続ける社会状況”というのはどういうものですか? まぁ、戦後の「産めよ殖やせよ」時代からすれば、出生率が下降するのは当然とはいえ、どんな状況なのか確認させてください。

塾長 たとえば、「女性の就職は結婚までの腰かけ」と思われていたのは、そんなに昔の話ではないですよね、日本では。今でさえ、女性が長く勤めるのは当然という認識が、浸透しているとは言えない。

塾生 「結婚したらすぐ辞めるから、女の子は」って考えている会社、ほんの10年ほど前は多かったですもんね。片や、「好きな仕事をするぞ」って仕事で自己実現をしようとする女性も増えた。

塾長 そして、女性の晩婚化傾向も進んだ。つまり、いろんな意味で、女性の選択が増えてきたんです。その流れに、ようやく今、拍車がかかってきたんだと思います。昔は、まずは「産めよ殖やせよ」。さすがにそうじゃなくなって、20年ほど前は“適齢期”という言葉がごく当たり前に使われる状況に。今なら差別用語になりかねませんけどね(笑)。

塾生 女性が定年まで勤めるとも考えられていなかったですね。

塾長 で、次は定年まで勤めるのは、結婚していない女性ですね、となり……出生率を下げるような、社会的力学が定着していくプロセスを、日本は段階的に経てきたわけです。この傾向はもっと深まるかもしれません。ですから、保育所を増やすなど、小手先の対処法だけで出生率が上向く、と考えるのは違うと思うんですよ。

塾生 時間を経た社会変化の中で、出生率が下ったわけですもんね。

塾長 ええ。今回の数字は、「出生率が高まってくれないと困る」という政治側の都合や、マスコミの報道の仕方が相まって、センセーショナルな数字に受け取られたんでしょうね。

 
「女が子供を産めば解決」なんてNG!
自分のライフスタイルと社会の在り方を考える


塾生 人口が増えれば、年金や景気回復の問題が、手っ取り早く解決するって、行政側は考えてそうですね。

塾長 そうそう。だから、見方を変えれば、「日本だけどんどん下っている」というフレーズには、年金問題がにっちもさっちも行かなくなったから、出生率は高い方がいいともう一度思わせよう、という陰謀が込められている。なんてふうに見えなくもない。

塾生 あー、私、思わされてるかもしれません(苦笑)。

塾長 出生率が下っているのは事実です。が、「“日本だけ”下っているのが問題なの? また上がればエライわけ?」ぐらいドンと構えておきたいもの。もちろん、出生率が下がり、人口が減っていくのは、国の消滅につながる気がしてコワイことではある。しかし、下ることを問題視するのは、必ずしも必要ではないと思います。

塾生 問題視する背景には、年金問題などの行き詰まりがあるとも考えられるわけで。

塾長 はい。発想の貧困さは、数字を評価する姿勢にも現れます。為替だって、同じ数字をめぐって高いだ、低いだ、いろんな人が、立場によっていろんなことをいう。出生率も同じ。しかし、出生率アップだけが問題の解決ではない。移民の受け入れを含め、在住外国人に市民権、永住権を与えれば、その人たちからも保険料が得られる、という方策もありますから。

塾生 地球規模で考えるれば、人口は増えているんですものね。でも、日本の人口を減らしたくないって考えるなら、どんな社会にしていきたいか、意識を変えていかないとダメ。

塾長 制度が悪いから子どもを産まなくなっているのなら、また問題ですからね。とにかく、いろんなところでご都合主義的な対応になっている。「瞬間風速だから大丈夫」というのも何の意味もないし、年金のために産むっていうのも、また違う。

塾生 私の周囲にも、出産適齢期でも子どもを産んでいない人、けっこういるんですが、経済的な不安や将来への不安を、産まない理由にしている人もいて。

塾長 一つの社会現象として、正面から見据えるべきですね。頭から「いかん」なんて言われることでもないし。

塾生 「子ども産め?」なんてプレッシャーかけられても困るし(笑)。自分の選択で産みたいです。書籍でも触れましたが、中国の一人っ子政策や“チャウシェスクの子どもたち”など、政治の都合で極端に制限されたり、奨励されたりして、あとでヒズミが出た例もありますね。

塾長 ええ。だから、出生率の低下自体より、それに対する反応、評価のほうを、問題視すべきなんです。下手すると「子どもを産みたがらない女性が悪い!」なんて話になっちゃう恐れもね。疑心暗鬼になりすぎかもしれませんが、「“人形の家”に女性たちを閉じこめろ?」って極端なことにも……。

2004/06/23

冬のソナタ/ヨン様カツラ

■冬ソナ・ヨン様カツラ大人気だソーナ(夕刊フジ)

注文200個超、3週間待ち


 “韓流”ブームの代表選手ともいえるペ・ヨンジュン(31)らドラマ「冬のソナタ」主人公の髪形をまねた“ヨン様カツラ”が在庫切れで、予約も3週間待ちと大ブレークしていることがわかった。

 カツラは韓国のカツラのトップメーカー「ベルニケ」社が製造。ヨンジュン演じるミニョンモデルとヒロイン、ユジン(チェ・ジウ)モデルがあり、人毛30%を含む本格的なもの(1万2800円)。日本では、出版社の「キネマ旬報社」が先月21日から通販限定商品として発売した。

 商品説明には「ロマンチックなライト・ブラウンのモデルです。男女兼用なので、女性にもおすすめです」とある。発売約1カ月で当初の予想をはるかに上回る200個を突破し現在、予約待ち状態だという。

 「こんなに売れると思ってなかったもので…」と人気に戸惑いを隠せない同社。それもそのはず、そもそもこの“ヨン様カツラ”は同社のインターネット通販の呼びこみ商品として企画されたもので、「10個売ればいい、なんていってたんですから」(同社)。

 商品を注文するのは30?50代の女性が大半。午後のひと時、お茶を飲みながら“ヨン様”ファン同士でカツラを堪能するのか、夫に被らせて自分はユジンになり切っているのか…。

 当のヨン様は、一部報道によると、約2カ月の休養・充電のため米国入りしたという。筋肉トレーニングや食事療法、英語、日本語の習得などが目的とも。

 ドラマ「冬ソナ」も高視聴率続きで、秋に向けてさらにフィーバーの気配だけに、今のうちに骨休めというところか。

いや、200個だったら、別に在庫切れになってもおかしくあるまい。

2004/06/22

総務省 テレビ局に行政指導

■総務省:テレビ2社に厳重注意 行政指導に疑問も(毎日新聞)

 総務省は22日、テレビ朝日の広瀬道貞社長と、山形テレビ(テレビ朝日系列)の堀田稔社長を呼び、両社の番組について「放送法に照らし問題があった」として厳重注意した。

 問題となったのは、山形テレビは自民党山形県連制作の広報番組「自民党山形県連特別番組 三宅久之のどうなる山形! 地方の時代の危機」(3月放送)。テレビ朝日は「ビートたけしのTVタックル」(03年9月放送)と「ニュースステーション」(03年11月放送)の2番組。

 放送法は、放送内容について政治的な公平性を規定している。総務省は山形テレビについて「政党広報番組は他の政治的主張や意見を取り入れる余地がない。厳格な政治的公平性が求められる注意義務を怠り、重大な過失があった」と認定。「放送法違反の疑いが強い」と指摘した。

 また、テレビ朝日のニュースステーションが衆院選中に民主党政権の閣僚名簿を放送した点については「適正な編集を図る上で配慮に欠けた」と指摘。「TVタックル」については、自民党の藤井孝男元運輸相の国会での別のやじの映像をつなげて編集・放送した点を「重大な過失があった」と判断した。

 テレビ朝日広報部は「真摯に受け止め、今後も正確な報道に努めていく」との談話を発表。山形テレビは堀田社長名で「行動規範を新たに定め、視聴者の信頼に応える放送を行う」とコメントを出した。 一方、日本民間放送連盟(民放連)は同日、2社への厳重注意を受け、放送法で規定した政治的公平性について「放送基準審議会」で研究していく方針を明らかにした。

【臺宏士、内藤陽】

 ■放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送番組委員会副委員長、田中早苗弁護士の話「行政指導に疑問も」

 放送局の自主的な取り組みを十分踏まえた上での行政指導だったのか疑問だ。テレビ朝日については「放送と人権等権利に関する委員会」(BRC)が改善勧告を出している。メディアによる自主規制機関が既に判断したのだから、総務省は「行政指導の必要はない」という判断があってもよかったのではないか。
普通の記事ではつまらないので、文句をつけているものをクリップ。

テレビ局の報道について。

■「TVタックル」は編集上の単純なミス。まぁ、「ミス」ではすまされない重大なものだが。

■ニュースステーションについては、明らかに意図的。「公平性」という問題は論点になりうるかもしれない。

■「山形テレビ」の件については、よくわからないが、民放放送局に政党が番組を作るのはやはり問題がある。

2004/06/21

イラク 韓国人人質事件

イラクで韓国人の人質映像、首切り落とすと警告(読売新聞)

 カタールの衛星テレビ「アル・ジャジーラ」は20日、イラクのイスラム武装グループに人質にとられた韓国人男性が映ったビデオ映像を放映した。武装グループは「タウヒード(神の唯一性)とジハード(聖戦)」を名乗り、韓国政府に対して、イラク駐留韓国軍の撤退と追加派兵の中止を24時間以内に約束するよう要求、受け入れられない場合には男性の首を切り落とすと警告した。

 武装グループは国際テロ組織アル・カーイダとつながりのあるヨルダン人アブムサブ・ザルカウィ容疑者の指揮下にあるとしている。

 韓国の聯合ニュースは、人質に取られたのは韓国の貿易会社「カナ貿易」の従業員の金鮮一(キム・ソンイル)さん(33)と伝えた。

 放映されたビデオによると、キムさんは覆面姿の男3人の前に座らされ、「韓国軍兵士の皆さん、ここから出ていってください。私は死にたくない」と英語で泣きながら訴えた。

 ビデオは20日、アル・ジャジーラのバグダッド事務所に何者かが送り付けてきたという。

 韓国はイラクに約600人の部隊を派遣しており、18日に3000人の追加派兵を決めたばかり。イラクでの一連の外国人人質事件で、韓国軍に対する具体的な要求が出されたのは初めて。

韓国の社説などの論調を見てみたい。日本とは対応が違ってくるかな。

早坂茂三(田中角栄 秘書)田中真紀子は?

田中元首相の秘書、早坂茂三氏が死去(読売新聞)

 田中角栄元首相の秘書で政治評論家の早坂茂三氏が20日、都内の病院で肺がんのため死去した。73歳。自宅は東京都目黒区平町2の21の4の106。

 早坂氏は、東京タイムズ社政治部記者時代に田中氏と出会い、後に田中氏の秘書となった。その後、政治評論家として活躍していた。

 「オヤジとわたし」「田中角栄回想録」「駕籠(かご)に乗る人 担ぐ人」など多数の著書がある。
対立していた田中真紀子のリアクションはいかに。

説明不足

伊集院敦「やはり説明が欲しい」(日経新聞/コラム・風向計6月21日)

 また、ひょいとハードルを乗り越えてしまった。戦闘が残る国に初めて自衛隊を送ったと思ったら、今度は与党内にさえ異論があった多国籍軍への参加決定だ。有事法制の成立などもあわせると小泉政権発足以来の安保政策の進展は著しい。

 これも小泉マジックのひとつと言えばそれまでだが、有権者の理解を求めるために設けた記者会見での説明はお世辞にも十分とは言えなかった。憲法上、疑義があるとされてきた多国籍軍への参加が今回は可能になった理由を聞かれた首相は(1)国連が全会一致で決議した(2)イラク暫定政権の大統領が自衛隊の活動継続を要求した??などを挙げ、国際協調、国連重視の観点からも「参加してはいけないという理由にならない」と強調した。逆説的な言い方で押し切る小泉流だ。

 これに先立つ、野党党首との会談では、しどろもどろだったらしい。野党側の説明によると、自衛隊の指揮権確保や活動内容などをめぐって首相は何度も説明に行き詰まり、同席者の助けを借りながら、どうにか会談を打ち切ったという。

 もともと、政権の座に就くまでは安保に関する細かな法解釈論争などは縁の無かった首相である。自衛隊を「軍隊」と言い切り、政府の現行憲法解釈では禁じられている集団的自衛権行使の研究も公言するなど、政権発足後も率直な発言を持ち味にしていた。過去の政府見解との整合性を図ろうとすれば無理が生じるのは当然だ。

 政府が年内にまとめる新防衛大綱では、現在は付随的な業務にとどまっている自衛隊の国際貢献業務を法律上も本来業務に格上げすることを打ち出す方向。政府・自民党はアフガンニスタンのテロ対策支援やイラク支援など国連平和維持活動(PKO)の枠からはみ出る任務についてその都度、特別措置法で対応してきたのをやめ、国際貢献のための恒久法もつくることも検討している。それなら、率直に説明するのが筋だろう。



 「説明不足」と首相を批判する野党の対応も、理解しにくい面がある。条件付きで参加容認の余地を残していた民主党もここにきて「多国籍軍の目的・任務には武力行使が伴う。憲法上の疑義は払しょくされない」と自衛隊の即時撤退を求める方針に転換した。

 これまでは自衛隊がいったんイラクから撤退し、現行のイラク復興支援特別措置法に代わる新法を制定すれば派遣を容認する可能性もあるとの立場を示していた。ニューヨークに出向いた菅直人前代表がアナン国連事務総長との会談で「国連支援の多国籍軍なら自衛隊派遣も検討できる」との意向を伝えたのも記憶に新しい。

 民主党の方針転換の背景にあるのは選挙戦略。「中途半端な姿勢を示すより、反対論に立った方が選挙で有権者に訴えやすい」といった党内の声に押された格好だ。政権党を目指すなら、ご都合主義との批判を浴びないようにするための説明が必要だ。

投票棄権

■毎日新聞/社説「棄権のツケは回ってくる」

 投票の権利を放棄して政治不信は解決しない。意思表示をしない人にはめぐりめぐってツケがはね返ってくる。

 投票率は参院選の隠れた争点だ。投票率が高くなると、政治状況は変わることが多い。

 衆参ともに投票率は低下傾向にある。時々の政策課題で多少のアップダウンはあるものの、低下に歯止めがかかっていない。

 ここ5回の参院選の投票率(小数点以下切り捨て)は65%、50%、44%、58%、56%。98年に58%へ跳ね上がったのは、投票時間を午後8時まで延長した影響である。いわば「追い風参考記録」で、次の選挙からまた下がりだした。なぜ投票率は下がるのか。

 結論から言うと、若者が投票所へ足を向けないからである。総務省がまとめた01年参院選での投票行動を見ると、20代前半の投票率は31%、20代後半は36%に過ぎない。一方、50代では65%を超える。60代になると、75%前後にまでアップする。20代で棄権した人が30代になって突然投票することは極めて少ないので、今後も投票率は低下する傾向が続く。

 年金がどうなろうと、多国籍軍へ自衛隊が参加しようと、投票よりレジャーだ、という人たちはいつの世でもいた。大ざっぱに有権者の3割といわれてきた。

 若者が「無関心」になる理由は政治家にもある。司法から定数是正を求められているのに、自ら手をつけられず違憲状態で選挙を行うのは、若者がそっぽを向くことに加担している。

 それでも、国民が意思表示しないと何事も変わらない。例えば、年金問題は見方を変えると世代間対立であり、高齢者は今の給付水準を守りたいため投票所へ行く。若い世代は、負担が増え、将来の給付が減るのに棄権していていいのか。高度成長期が終わり、政治の課題は既得権益の再調整となった。黙っている方が不利益をこうむる。

 投票率低下を加速したのは、ゼネコン、労働組合、職域団体など選挙マシンと言われてきた組織の地盤沈下もある。さらに、コミュニティーの希薄化とも無縁ではなさそうだ。無党派層が増えているのは、世の中のしがらみがなくなっていることと連関している。その中で、まだ強力な集票力を維持しているのは宗教団体だけだ。

 世界の先進国も同じ悩みを抱えている。オーストラリアやベルギーは義務投票制を導入し、棄権者には罰則を科している。オーストラリアの場合、投票へ行かなかった人は最高20ドルの罰金を払わなければならない。その結果、下院選挙の投票率は約95%にもなる。

 だが、投票はあくまでも有権者の自発的な意思によらなければならない。強制的に投票所へ向かわせる社会は息苦しい。参院選では政策課題、小泉政権の評価、政治不信のはけ口など「理由はそれぞれ」、あなたの考えを示そうではないか。

2004/06/20

イラク・アフガニスタン

吉田正也「アフガンにも目を」(東京新聞/私説・論説室から)

 新聞を開けば、イラクのニュースが掲載されていない日はない。だが、アフガニスタンも忘れてはならない。

 二、三年前の紙面には「アフガン」の文字が躍っていた。米英軍の攻撃でイスラム原理主義のタリバン政権が倒された後、暫定政権づくりが進む中で、国際社会の関心は次第に薄れた。

 二〇〇一年末のボン合意に基づいて暫定行政機構が発足し、昨年六月には移行政権となり、ことし一月に新憲法を制定した。九月には大統領選と議会総選挙が予定されている。

 新しい国づくりは少しずつ前進しているけれども、現実をみるとアフガンは依然、テロとの戦いの最前線にあり、いわゆる「破綻(はたん)国家」から完全には脱し切れていない。

 タリバンや国際テロ組織アルカイダの残存勢力は根強く、パキスタンとの国境地帯を中心に米軍や政府軍と戦闘を繰り返し、テロ活動も活発だ。人道支援活動グループも標的にされ、多くの犠牲者が出ている。

 地方の軍閥は引き続き勢力を誇示し、カブールのカルザイ移行政権の威令は首都とその周辺に限られている。中央政府の進める軍閥の武装解除、兵士の社会復帰計画も思ったほどに進まず、軍閥同士や軍閥と中央政府の武力衝突は絶えない。

 アフガンに駐留する国際治安支援部隊(ISAF)司令官は、このままでは国家再建のプロセスから逸脱すると警告している。中には、九月の選挙延期を唱える声もある。

 「アフガンを自立した国家に」。国際社会がタリバン政権崩壊後に掲げた目標だ。アフガンが元に戻ることのないように、もう一度しっかりと見つめていこう。