イラク・アフガニスタン
吉田正也「アフガンにも目を」(東京新聞/私説・論説室から)
新聞を開けば、イラクのニュースが掲載されていない日はない。だが、アフガニスタンも忘れてはならない。
二、三年前の紙面には「アフガン」の文字が躍っていた。米英軍の攻撃でイスラム原理主義のタリバン政権が倒された後、暫定政権づくりが進む中で、国際社会の関心は次第に薄れた。
二〇〇一年末のボン合意に基づいて暫定行政機構が発足し、昨年六月には移行政権となり、ことし一月に新憲法を制定した。九月には大統領選と議会総選挙が予定されている。
新しい国づくりは少しずつ前進しているけれども、現実をみるとアフガンは依然、テロとの戦いの最前線にあり、いわゆる「破綻(はたん)国家」から完全には脱し切れていない。
タリバンや国際テロ組織アルカイダの残存勢力は根強く、パキスタンとの国境地帯を中心に米軍や政府軍と戦闘を繰り返し、テロ活動も活発だ。人道支援活動グループも標的にされ、多くの犠牲者が出ている。
地方の軍閥は引き続き勢力を誇示し、カブールのカルザイ移行政権の威令は首都とその周辺に限られている。中央政府の進める軍閥の武装解除、兵士の社会復帰計画も思ったほどに進まず、軍閥同士や軍閥と中央政府の武力衝突は絶えない。
アフガンに駐留する国際治安支援部隊(ISAF)司令官は、このままでは国家再建のプロセスから逸脱すると警告している。中には、九月の選挙延期を唱える声もある。
「アフガンを自立した国家に」。国際社会がタリバン政権崩壊後に掲げた目標だ。アフガンが元に戻ることのないように、もう一度しっかりと見つめていこう。